計画は思った通りうまくいった。先生も
「あおいが頭痛なんて珍しいな。大丈夫か?」
と少しも疑っていなかった。普段真面目に授業を受けておいてよかった。
いよいよ、うわさを試す時が来た。唯は
「頑張ってね!先生にはうまくいっとくから!」
と戻っていった。
ゆうれい階段は、昼間でも少し暗い。うわさでは、この階段の下にはお墓があったらしい。
怖くないと思っていたあおいも、いざ行こうとすると、少し勇気がいる。
「こんなのうわさよ。大丈夫。大丈夫。」
口に出して、階段を早足で登っていった。
階段の最上階の一番端。その教室にうわさの黒板はある。
教室は薄暗く、とびらは閉まっている。確かに何か出てきそうな雰囲気だ。
「この中か。暗いな。でも、早くしないと授業が終わっちゃう」
唯と約束してしまったので、もう引き返すことはできない。
あおいは、意を決して中に入って、黒板に向かった。赤いチョークで、急いで黒板に質問を書いて教室から飛び出た。
怖さと、焦りで文字はぐちゃぐちゃだったが、なんとか読める字だったはずだ。
「なんで勉強しなくちゃいけないの?」
書くことは、これだと決めていた。
もし手紙が返ってきたとしても、先生や友達だったら、この答えを答えられるはずないと思ったから。
しかし、うわさは嘘だと思いながら、あおいは、心のどこかで、もしうわさが本当だったらいいなと思っていた。
手紙が来ることをちょっと期待しているなんて唯には内緒。言ったら笑われちゃうから。
授業が終わるのを待って、教室に戻り、いつもの授業が続いた。
唯もあおいも、手紙が来るかどうかより、計画したことがうまくいったことに満足していた。
次の日には、もう手紙が返ってくるかどうかなんて気にならなかった。
一週間後、いつものようにあおいは学校にいった。まさか、この日からあおいの人生が大きく変わるなんて、本人も思っていなかった。
教室に入ると、いつものように、机の中に教科書を入れようとした。
「え?うそ?」
あおいはあわてた。机の中に茶色の封筒が見えた。