「これだけ自分のために書いてくれているんだ。ちゃんと読もう。ここからが、本題だ」
あおいは、息を大きく吸い、気持ちを入れ替えて、三枚目を読み始めた。
これから、あおい様に勉強に対する、新しい考え方をお伝えします。
そこから、なぜ私が、「勉強することは素晴らしい」と心から言い切れるのかをお伝えいたします。
私は勉強を一つの
『道具』
だと思っています。いきなりそんなことを言われても、わからないと思うでしょう。
順に説明しますね。
実は、物事はすべて、「人を幸せにするための道具」なのです。
例えば、今、あおい様が手にしている「手紙」。これは、文字を書いて、相手に送ることで、人を幸せにするための「道具」です。
例えば、今、あおい様のお母さんが夕飯準備のために使っている「包丁」。これは、魚や肉を切って、美味しい料理を作って、人を幸せにするための「道具」です。
例えば、今、あおい様のお父さんが見ている「テレビ」。これは、感動的な内容や笑える番組を流して、人を幸せにするための「道具」です。
勉強も人を幸せにするための「道具」なのです。
しかし、「道具」というものは、使い方によっては、人を幸せにしたり、不幸にしたりしてしまうのです。
正しい使い方をすれば、人を幸せにできます。しかし、間違った使い方をすれば、人を不幸にしてしまう恐ろしいものです。
先ほどの「手紙」「包丁」「テレビ」の間違った使い方は、どのようなものがあるでしょう?
あおい様も考えてみてください。
ここからは、私が考える間違った使い方を紹介いたします。
手紙を使って、悪口を書いて、友達に送ること。
包丁を使って、人を刺してしまうこと。
テレビのことを信じすぎてうそのうわさをみんなに広めてしまうこと。
これらのことは、間違って使ってしまうことで自分の人生も、他人の人生もこわしてしまうことになります。
しかし、あおいさんは「手紙」を使って、他人の悪口を書いてはいけないことを知っていますし、「包丁」を振り回してはいけないことを知っていますよね。
だから、間違った使い方を知っているからこそ、正しい使い方をすることができるのです。
では、あおい様。
あなたは、勉強の「正しい使い方」と「間違った使い方」を知っていますか?
一度、考えてみてください。
「勉強は道具」その言葉にあおいは衝撃を受けた。
勉強は、やらなければいけないものだと思っていた。勉強はやったほうがいいものだと思っていた。宿題なんてなくなればいいと思っていた。
それが、「道具」だったなんて。しかも、使い方があったなんて。勉強という道具の使い方なんて考えたこともなかった。
正しい使い方と間違った使い方。すごく続きは気になる。しかしこの先は、まだ読まないほうがいいと感じた。
「まずはしっかり自分で考えてみなきゃ。」あおいは机に向かった。
あおいは、初めて自分から机に向かった。そして、ここから、あおいの本当の勉強が始まった。
「あおい!ごはんよ!宿題は大丈夫?」
いつものお母さんの声にハッとした。 気がついたら、7時を回っていた。机に向かったまま2時間が経っていた。その時間はあっという間に感じた。
ご飯を食べている間も、お風呂に入っている間も、宿題をしている間も、寝るときでさえ、勉強の「正しい使い方」と「間違った使い方」のことで頭がいっぱいだった。
正しい答えが出ないまま、朝が来た。